稀代の「エンターテナー」京極夏彦先生
…妖怪という個人的な趣味にこだわっていると見せかけて、実は「読んで楽しい」が徹底して追究された娯楽超大作群!


姑獲鳥(うぶめ)の夏
衝撃のデビュー作。トリック自体は賛否分かれるようだが京極味が詰まった玉手箱!
美しい日本語による論の展開、昭和初期のセピア色の映画のような空気感漂う世界。
この作品で京極堂シリーズのキャラクタの魅力にどっぷり取り憑かれることでしょう。

魍魎の匣(もうりょうのはこ)
シリーズ2作目…既に京極堂のウンチクが待ち遠しくてたまらなくなっています。
バラバラ殺人事件という題材がまた、古典怪奇ロマンの傑作を彷彿とさせます。
引きずり込まれる「彼岸」の世界…個性的なキャラによる独特の笑い…最高です。
狂骨の夢
「いさま屋」という新たなキャラを加えたシリーズ3作目。
ひょうたん鯰のような伊佐間君の身に余るキッカイな事件!冴え渡る壮大な構想!
筆者の心理学・宗教学への造詣の深さにも驚かされます。頭の良さに敬服…。
鉄鼠の檻(てっそのおり)
活躍するのが坊さん連中だけにこれまでの浪漫主義的な雰囲気はやや少ない。
日本の宗教界をエッセンスに極上のミステリに仕立てる手腕は相も変わらず見事!
探偵・榎木津とトボけた鳥ちゃんの名コンビによる笑いも冴え渡ります!
絡新婦の理(じょろうぐものことわり)
すすす、すごすぎる…正に蜘蛛の糸のように緻密に張り巡らされた目もくらむプロット。
そして登場する美しい女たちに魅了されます。その性根は知らねど…。
情景描写も凝っています。今でも目の前に伊豆の館が浮かぶほど、色鮮やかな作品。
塗仏(ぬりぼとけ)の宴−宴の支度/宴の始末
残念ながら…正直に言って…とうとう、本作でシリーズは少し低迷したと思います。
魅力的なキャラクターの人格は一度、崩壊させなければならないんでしょうか??
超人のような力を持つ影の存在も気に入りません。区切りとして必要な作品…なのか?

百鬼夜行−陰
京極堂シリーズ6作目(塗仏)までの短編サイドストーリー。
登場人物がかつての脇役だけに華やかさに欠けますが、
補完の意味で読んで損はありません。妖怪絵の判じ物としても楽しめます。
百器徒然袋−雨
大人気の榎木津クンの魅力が爆発!腹を抱えて読める3つの中編です。
ファンにはこたえられない、マニアックなサービス満点の、ひたすら面白い番外編。
きっと作者もサクサクと楽しみながら書いたんだろうなあ〜。ブッ飛ばしてます!
百器徒然袋−風
こりゃまた、愉快、愉快! すべての榎木津ファン必読の名(迷?)作3編。
榎木津の破天荒なお茶目っぷりはとどまるところを知りません。
個人的には、エノさんは永遠の破壊神でいてほしいです…人間・榎木津は見たくない。
今昔続百鬼−雲
「妖怪馬鹿」のでこぼこコンビが繰り広げるコメディタッチの短編ミステリ!
多々良先生の勘違いっぷりにはイラッとさせられますが、肩の力を抜いて楽しく読めます。
日本の懐かしい風景の旅情が溢れています。珍道中の騒音でかき回される訳ですが…。

陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず)
1作目に立ち返ったような雰囲気が感じられる、待望のシリーズ7作目。
謎そのものは簡単に解けますが、明確な意図が感じられます。今回は「悪意なき悲劇」。
作者の飽くなき探究心で今後、どれだけのテーマが奏でられるのか、期待が高まります。
邪魅(じゃみ)の雫
なんだか世間の評価は落ちつつありますが、これは「絡新婦」と対比させると面白い。
蜘蛛の糸ではなく、雫(未必の故意)の波紋が広がってゆく「殺人の連鎖反応」がテーマ。
私は榎木津サマの内面が見えすぎたことが少し寂しいです…。
嗤う(わらう)伊右衛門
おどろおどろしい話なのに、真実の「美」と「哀」を堪能できる感動の傑作です。
怪異のない四谷怪談。人の情念の凄みが心の底からせり上がってくるようで、圧巻。
「巷説百物語」の又一の絡みも見事で味わい深い。ラストは嗚咽が止まりませんでした。
覘き小平次
なんだか居心地の悪い奇妙な暗さを、巧い心理描写を用いて描き出しています。
主人公が不気味で好きになれないので細かな内容があまり記憶に留まりませんが、
独特の余韻が残ります。雰囲気、空気感がじわじわと心に残る芸術品です。

巷説百物語
これは素晴らしい時代劇ですよ。
竹を割ったようなスッキリ巧みな情景描写!(先生、冗長なだけじゃなかったんだ…)
痛快でいて繊細な「哀」に彩られた、個性が光る短編集。必読です。

続巷説百物語
力強くも優雅な言の葉で綴られる、相変わらず鮮やかな仕掛けの数々!
又一一行の人物造詣もより一層深みを増し、それぞれに背負った哀愁がカッコイイ。
幕引きもまさに「こうあるべき」。チョンチョンと三味線の音が聞こえてきそうな名作。
後(のちの)巷説百物語
老人になった百介の思い出話として語られるので少々、寂しい、切ない感じがします。
個人的には臨場感溢れる、前2作の方が好きでした。
しかしながら、妖怪や祟りが人の心になぜ巣食うのか?という論はいつもながら秀逸!
前(さきの)巷説百物語
全6話。最初の2〜3話は又一の若さに比例して底が浅いですが、悲痛な出会いと別れを経験し、
ご政道と闇社会の狭間に自らの立ち位置をしっかと見据え、「御行」となっていきます。
「御行奉為(おんぎょう、したてまつる)」と遂に言い放つ瞬間は、ファンなら万感胸にせまるはず。
どすこい
わっはっは!こんなパロディまで書いちゃうとはなんて器用なセンセイなんでしょうか。
「完全肥満。くびれなし!」や「ちから弁当」、「ずぶねり!」「食べないでェ」
などのアホらしいギャグは、今でも我が家の語り草です。
ルー=ガルー−忌避すべき狼
個人的にはイマイチです。登場する少女の心にリアリティを感じられませんでした。
SFライトノベルとして気楽に読む分にはいいと思いますが、印象には残りません。
しかしやはり器用な作者。上手にまとめてしまうなあと感心を新たにする1作でした。
豆腐小僧双六道中ふりだし
かーわいらしいですよ。持っているだけで嬉しくなる装丁もGOODです。
落語のようなオチのある、知的で軽妙な語り口。
ニコニコしながらサラリと読める、深い「可笑しみ」のあるすごろく道中!